2014年5月21日水曜日

goddamnit Detroit "D"


MC5、Pファンク、そしてモータウン!
クソみたいな街だよって彼女は僕に教えてくれた。
白人も黒人も其処に集まる人間は皆クソ!
猫もクソ!この子達もクソ!
彼女はデトロイト生まれのその猫を撫でながら、
笑顔でそう言ったんだ。
猫はとても人懐っこくて、
それでいてデトロイトビートな例のグルグルって声を喉の奥から鳴らしたんだ。
そのビートはこんにちはでもハローでも無くて、
“HELL!OHPS!”だったよ。

その街はフォード、クライスラー、GMって名高いアメリカの象徴がこぞって作り上げた街なんだけど、今じゃ不景気極まりない出涸らしみたいな街。20万人って人間が先の見えない不景気を理由にいきなり仕事を無くしちまうなんてそのキチガイ加減に、街自体の感情は一気に濃縮されたウランみたいになったんだ。
人間は全てを無くすことなんて出来ないよって彼女は笑って言った。
何故?って僕は彼女に聞くと、彼女は一言だけこう言ったんだ。

「感情やSOULが無くなる事って想像できる?」

「モータウンって何?」
「キチガイを集めた造り酒屋。」
「Pファンクって?」
「TVの編集音声のピー音の元ネタのキチガイの事。」
「MC5は?」
「モーターシティー5」
「5って?」
「拳を作る指の本数。」

街は音楽で爆発した。
仕事を失い名誉を失いプライドを失い車を失い家族を失いテレビを失い情報を失い晩御飯を失い武器を失い屋根を失い靴下もパンツもつめの垢も全部失った結果、其処にはSOULが素っ裸で残された。爺も婆もおとんもおかんも長男も次男もゲイも犬も猫も信号機も皆感情でぶつかったから、あんなに沢山の音楽家やDJの出身地になったって彼女は僕に教えてくれた。そして付け足したんだ。
「シンプルな街なのよ。」
喜んで怒って悲しんで楽しむ。人間の感情なんて突き詰めればシンプルなフラクタルの理論で出来上がってるはずなのに、何で混乱するの?って彼女に聞いたら彼女は僕をいきなりぶん殴ったんだ。僕の驚いた顔なんて関係ないってくらいに彼女は笑顔で立っているだけだった。僕は勿論混乱したんだけど、彼女はその混乱する僕なんて関係ないってくらいに笑ってるだけだった。
「私は何?」
彼女は笑ってそう僕に聞いたんだけど、僕は何も答えられなかった。
すると彼女は僕に耳打ちするように教えてくれた。
「暴君よ。」
僕は少しおかしくて笑ったんだけど、彼女は目の色を変えて僕をもう一回ぶん殴った。
「誰が暴君よ!」
それを聞くと僕らはどちらとも無くあまりにおかしくてクスクスと笑い出したんだ。
デトロイトではクラブイベントで失神者が出るとアシッド入りのヤカンがラグビー部みたいに運ばれてくるとか、本当はそのヤカンに失神させられてるんだとか、ルームメイトのプロレス技に失神させられたときはアシッド入りのヤカンが重宝したとか、お客さんが来てもヤカンにはアシッドが入ってるからコーヒーの湯すら沸かせないからとかなべやかんもアシッド入りだったらもう少しぱっとしたんじゃないかとか、
そんな話を沢山聞かせてくれた。

「デトロイトのDはね、出涸らしのD、超クールのD、シンプルのD、感情のD、SOULのD。本気でDワーズを探した人はきっと幸せになんてなれないの。デトロイトのDって言葉を聞いた途端にね、文字あわせなんかじゃなくて単にデトロイトをイメージできた人だけがね、幸せになれる。デトロイトって言うのはそんなクソみたいにキチガイの街。」
「デトロイトのDはキチガイのDだね!」
そう彼女に言うと彼女は血相を変えて僕をぶん殴ったんだ。
「Dじゃないじゃない!」
僕は笑顔で逆の頬を彼女に差し出すと、
彼女はやっぱりローキックで僕のひざ辺りを痛めつけた。
そしてようやく笑ってこう言ったんだ。
「わかんないわよね。結局何も。」
僕は笑顔で頷いたら彼女はうんって頷いた。

そこで僕の目が覚めた。
夢だったのか何だったのかなんてどうでもよかったんだけど、
其処には天使が立っていたから取り敢えず話しかけたんだ。

「8MILEのエミネムもデトロイトだね?」
「ウフフ、あれはデトロイトでも上流階級の話。」
僕の最後の問いに天使はくすっと笑ってこう答えたんだ。
其処にデトロイト育ちの猫達はもういなかったんだ。
「僕の感情はまだ残ってるかな?」
って天使に問いかけたとき、天使はそっとこういったよ。

「SOULや感情は、無くしたくたって苦痛にしかならなくたって
無くなるものではないの。」

ROMANCEの全てが始まったDETROITで逢いましょう。



SOMEDAY,MAYBE

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